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熱気と殺気と少々の奇異の視線にさらされながら(幸い客も店員も自分のことに手いっぱいのようで気付いた者は少なかった)、なんとか目標をゲット。
さて、と出口を探して泳がせた視線が向こうのほうで同じように流されている伝通院をとらえた。
(うーん、同じ入り口から入ったのに何でこんなに離れちまったんだろう?)
そんなことを鷹介が思ったとき、事態は起こった。

ドーン!!

突然の豪音が耳をつんざいた。
視界が一瞬真っ白になる。

キャーッ!!

沸きあがる悲鳴。
店内にいた人々が我先に走り出す。
客だけではない。制服を着たままの店員もだ。
緊急事態発生。
懐かしい、などとは口が裂けても言いたくないが、かつては毎日のように感じていた緊張感が鷹介の全身を駆け抜けた。
人の波に逆らって走り出す。
流れていく白煙の向こうに外の景色が見えた。
壁に大穴が開いている。
爆発音はこの壁が吹き飛ばされたものらしい。
そしてその壁を今まさにくぐろうとしてる奇妙な「物体」。
「なんだ、アレ?」
金属製の不格好なマネキン、と鷹介は思った。
サーガインのコピージャイアントの小さい版とも言えるかもしれない。
限りなくおもちゃのようだが、腕にあたる部分からは硝煙が上がっているところからしてそれが犯人に間違いはなさそうだった。
ふとそいつの足元に鷹介は目を留めた。
散乱したチョコレート。
恋のキューピッドになるはずだったそれは無残にばらまかれ瓦礫に埋もれている・・・。
猛烈に怒りがこみあげて来た。
ここにいた人たちにとってそれは特別なチョコレートだったはずだ。
もちろん鷹介にも。
「許せねえ!忍風!シノビチェンジ!」
「装着!」

(・・・え?)

隣で同時に発せられた声と続いて起こった「変化」に鷹介は顎が外れるほど驚いた。
それは相手も同じだったようで一瞬、彼らは「敵」の存在も忘れて顔を見合わせた。
「センセイ?」
尋ねてみる。
紺色のカブトムシのようなマスクと紺色の装甲を身に付けたその人物は、確かに伝通院その人だったはずだ。
(角忍?)
カブトムシに似せた作りは一甲のそれを思わせる。
だが、迅雷のシノビスーツはゴウライジャーの二つだけだったはず。
それに似ているようではあるが、シノビスーツとはどこか違う。
ハテナマークが頭の中を駆け巡って軽くパニックに陥る鷹介だが、相手もご同様でカブトムシのマスクから困ったような声が漏れた。
「君は一体・・・」

ドーン!!

「うわあっ!」
いきなり攻撃が再開される。
油断していた鷹介と伝通院は吹き飛ばされてショーケースに叩きつけられた。
体の下でガラスが粉々になり、きれいに飾られていたチョコレートが押しつぶされる感触。
(ごめん!チョコレートたち!)
もはや食べ物でなくなったそれらに心の中で手を合わせ鷹介は跳ね起きた。
「畜生、おまえら絶対に許せねえ!」
ギッと目の前の不格好な敵を見据える。
が、その視界の隅でガラスのかけらを撒きながら立ちあがった伝通院が何かを構えるのが見えた瞬間、青くなった。
(アレ、撃つのか?!)
「ファイナルゥー」
「待った!!」
がっちりねらいを定めている伝通院に慌てて待ったをかける。
「待った!ここでそんなのぶっぱなしたらヤバいって!」
ただでさえ壁に大穴の開いている状態である。これ以上穴を開けたら崩れるに決まっている。
「む、そうか」
そう言って伝通院は銃を下ろす。
(うへえ、オレもたいがい無茶だって一甲に怒られるけど、この人オレよりムチャクチャだ・・・)
その隙に状況不利と見たか、敵は逃走を開始した。
「待て!」
通ってきた穴を抜けて再び外へ出たそいつらを追って、鷹介たちも飛び出した。

「これは・・・」
飛び出した二人は一瞬絶句した。
店の外には同じような奴が何体もいて、そこらじゅうのバレンタイン特設売り場を破壊していたのだ。
「ハヤテ丸!」
鷹介は背中の刀を抜いて切りかかった。
色々と疑問はあったが、とにかく今はやつらを止めるのが先決である。
「この野郎!」
ケーキ屋の前のワゴンを破壊していた奴に飛び蹴りを浴びせ、こちらを向いた胴体に横一閃。
ひっくり返った胴体から火花が散る。
裂けたその部分から覗くのはたくさんの配線と金属だった。
「ロボットかよ!」
「そのようだな」
驚く鷹介に、伝通院が頷く。
「なら遠慮はしねえぜ!」
叫んで鷹介は次のロボットに切りかかった。
横目で見れば伝通院もあのバカでかい銃をブッぱなしている。
(あー、さっきは止めといてよかった)
そう思いつつ、鷹介は負けじと刀を振りまわした。
あの医師が何者かは分からないが、遅れを取っては伝説の後継者の名が廃る。

奮闘の甲斐あって(?)ものの5分もかからずロボットたちを片付け、さて改めて現状について話そうかとしたときである。
突然、地面が揺れた。
地震、というには不自然な揺れに放りだされ地面に這いつくばる。
そして、必死で顔を上げた鷹介の目に映ったのは見たこともない巨大ロボットたっだ。
「あれは・・・」
隣で伝通院が信じられないという声を上げた・・・。

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