祝福
「神谷さん,知ってますよね?仁さんの誕生日。」
笑顔で交番をのぞいたかと思ったら,第一声がこれで,神谷豪は,倒れそうになった。
「蘭,いきなりなんなんだ。」
「いきなりって。来週の土曜日ですよ,準備してます?」
「えっ?!」
そうか・・・天秤座って9月の終わりからそうなのか・・と,そんなことを今更確認している豪が,準備などしているわけがない。
「剣ちゃんとね,話しててわかったんですけど,私の誕生日と3日しか違わないんですよ,仁さん。」
「そうなのか?」
なのに星座が違うのか?ふ〜〜ん・・などと思いながら,蘭のテンションにはまるでついていけない豪だった。
「それでね,剣ちゃんが,私のお誕生日といっしょに仁さんのもお祝いするために,みんなでパーティしようかって!」
「みんなでって。蘭はいいが,あいつは26になるんだよな?」
「年なんて関係ないですって。仁さん,好きそうでしょ,パーティ。」
「そんな気もするが・・」
「まあ・・・何かを口実に集まりましょってことなんですけど。」
「結婚式でも集まって飲んだじゃないか。」
「仁さんの誕生日がね,土曜日なんですよ。だからその日に開いちゃおうかっていう話になってるんです。」
「だれと話してるんだ?そんなどうでもいい相談。」
「どうでもいいって・・・あっ!神谷さん,やっぱり2人で過ごしたいとか思ってます?」
「えっ!」
「そうですよねぇ〜,初めてのお誕生日ですしねぇ〜,お邪魔ですよねぇ〜。」
「そ,そんなことはない!だんじてない!」
蘭はそっと後ろを向いて笑ってしまった。
思った通りのリアクションを返してきた豪に,笑いがこみ上げてきたのだ。
その笑いをかみ殺して
「じゃあ,いいですよね!場所とか時間とか,詳しいことはまた連絡しますから!あ,プレゼントの用意は絶対ですよー!!私のも忘れないでくださいねぇ!!じゃあ!」
「おい!蘭,らーーん!」
時計を見ながら走り去っていく蘭の背中を見送りつつ,
「プレゼント・・・って・・どうすりゃいいんだ?」
「しかし・・土曜日っていったって・・おれたちの中で土曜だから休み,なんてのは,高校生と大学生くらいじゃないか。」
よく考えてみればそうなのだ。あとは曜日と関係のない仕事ばかりのような気がする。仁はもちろん,洸も愛も,涼子も天馬も。自分だってそうだ。辰平なんてかえって休めないだろうに。あとの連中は,休みがあるのかどうかさえ,よくわからないような・・・。
「そんなので集まれるのか?」
ボーッと立っている豪に,交番の中から声がかかった。
「どうした?なにかあったのか?」
「いえ,何も。」
慌てて仕事にもどった豪だったが,頭の中は,蘭の言った”プレゼント”という言葉が引っかかっていた。
それでもやっと,土曜日は早く終われるように手配をした。
時間と場所を知らせるメールが届いた。土曜日の19時から,洸の知り合いのやっている小さな店を借り切ってするらしい。
メールだけではよくわからなかったので,直接洸に電話して場所を確認しておいた。
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