桜記念日
満開の桜の下を歩く。
この時期はどこを歩いても桜桜桜。
日本人ってホントに桜が好きだよな。
んで桜が咲いたらやっぱり花見なわけで。
桜が好きなのか花見が好きなのか、ちょっと判断に迷うところだね。
かくいうオレもさっきまでそのどんちゃん騒ぎの中にいてさ、結構いい調子でビールやら焼酎やらを飲んでたんで、少しばかり足下がヤバい感じ。
なにせ去年の花見が雨で中止になったせいもあってか、社長以下みんな今日は気合いが入りまくってていつも以上にハイテンションなんだもんなー。
「飲みすぎだ」って一甲に怒られるかも・・・なんて思いつつ、ふと足を止めて頭上の桜を見上げた。
夜桜って独特の迫力があると思う。じっと見ていると息苦しくなるくらい。
焦点を絞ればそれは小さな花びらの集合体なのに。
ぼんやり見つめていると一枚、また一枚と小さな花びらが降ってくる。
ああ、1年たったんだ・・・って、唐突にそんな感慨が湧いた。
ジャカンジャとの戦いが終わって、一甲と暮らし始めたのはちょうど去年の桜の時期だったんだ。
そっかあ、もう1年か。
早かったような気もするけど、なんだかもう随分前からのような気もする。
それくらい今が平和ってことかな。
当たり前のように一甲がそばにいる生活。
時々、そう、今でも時々これは夢なんじゃないかと思う。
だってその前の年の桜の時期はオレたち敵同士だったんだぜ?
死にそうな目に何度も遭わされた。
泣きたくなるほど腹の立ったときもあった。
けどどうしても嫌いになれなくて。
気がついたらどうしようもなく好きになってた。
その気持ちは今も変わらない。
うん、たぶん・・・いや、絶対、一生変わらない。
オレは手のひらに受けた花びらをぎゅっと握りしめた。
「一甲!」
オレは勢いよくマンションのドアを開けた。
「お帰り、早かった・・・」
「花見!」
迎えに出てきた一甲の言葉を遮ってオレは叫んだ。
「一甲、花見しよう!」
「花見は・・・してきたのではないのか?」
「ああ、だけどお前とはしてないだろ?」
元気よくそう言ったオレに一甲は小さくため息をついて「お帰りのキス」をした。
「今からか?」
「そう」
「どこで?」
「駅の裏の公園は?」
やれやれ、という顔を一甲はした。
へへ〜ん、オレの勝ち。
「ただし、酒はなしだぞ」
「えーっ、なんでー?」
「飲みすぎだ、酔っ払い」
「酔ってない!」
「酔っ払いの常套句だな」
そう言って一甲はオレのおでこをコツンと叩いた。