言えない言葉<1>
玲瓏と降り注ぐ月光をを切り裂くように一甲は剣を振った。
いくらそうしたところで、後悔が消えるはずもないことは分かっていたが、そうでもしていなければ耐えられなかったのだ。
実際、後悔などなんの役にも立ちはしない。
したところで、一甲が鷹介を抱いた事実に変わりはない。
どうしても止められなかった。
初めて、心の底から欲しいと思った存在。
決して手に入るまいとあきらめてもいた。
しかし。
白光が空を切った。切っ先から稲妻が走る。
本気なのだと鷹介は言った。
本気で一甲を思っていると。
だが、一甲には答える術がない。
「くっ」
突然の激痛。
取り落とした刀が地に転がった。
もう慣れてしまったとはいえ、痛みの強さには変わりがない。できることといえば、背を丸めて痛みが通り過ぎるのをじっと待つことのみ。
遠からずこの痛みは一甲を殺すだろう。
だから何も言えなかった。
咽喉まで出かかっている想いはもちろん、いつものように突き放す嘘さえも。
なぜなら。
痛みの治まった後の疲れを振るい落とすように一甲は立ち上がった。
落とした刀を拾い上げ、ぶんと一振りする。
手放したくないからだ。
鷹介をこの手に留めておきたいと望んでいるからだ。
望む資格はないと分かっていながらまだそう願う浅ましさ。
正眼に構えた刀を握る手に力が籠る。
刀身に気が満ちていく。
これは怒り。己の不甲斐なさに対する怒りだ。
「うおおおおおおおおっ!」
思いきり降り下ろす。
一瞬、あたりが真昼のように明るくなり、遅れて鈍い轟音が響いた。
あたりが闇と静けさを取り戻したとき、そこに一甲の姿はなかった。