さてこちらは退出した者とさせられた者。
一甲は鷹介の腕を掴んだまま、森をずんずんと奥へ歩いていく。
「なんだよ、一甲!どこ行くんだよ!」
引きずられるように歩きながら鷹介が叫ぶ。
「黙ってついてこい」
「何言ってんだよ!オレが悪かったんだから謝らせろよ・・・うわっ!」
急に立ち止まった一甲の肩に思いきりぶつかって鷹介は鼻を抑える。
「いってえな!もう!」
「馬に蹴られたいのか?」
「え?」
苦笑交じりに振り返った一甲を鷹介はぽかんと口を開けて見上げた。
今ぶつけた鼻の頭が赤いのがご愛嬌だ。
「トナカイだな」
季節外れな感想を呟きながら一甲の唇が降りてきて鷹介の唇を塞ぐ。
ざあ、と風が梢を揺らして通り抜けた。
「・・・何考えてんだよ」
気の遠くなるほど長いキスの後。
うっとりと、しかし不満げに鷹介は呟いた。
「一鍬のことは、今は七海に任せておけ。馬に蹴られてもいいなら別だがな」
「う〜、それはわかってるけどさ・・・」
鷹介は視線を逸らした。
事の原因が自分にあるということはわかっているらしい。
「悪いと思うなら後で謝っておけばいい。一鍬とてお前に悪気があったとは思ってはいないだろう。それより・・・」
一甲の唇が鷹介の鼻先をかすめた。
「・・・あまり、一鍬にばかりかまけていると、俺が拗ねるぞ」
言われた言葉に一瞬、目を見張り、次に鷹介は盛大に噴き出した。
「笑うな」
至近距離で唾を浴びせられた一甲はわざとらしいしかめ面を作る。
その顔をうれしそうに鷹介は見上げた。
「もしかして、妬いてんのか?」
「ああ、そうだ」
「バーカ」
くすくすと鷹介は笑った。
「一鍬は弟だろ」
「兄弟は他人の始まり、とはよく出来た言葉だ」
「かー、よく言うよ。命がけの兄弟愛が。オレがどんだけ妬いて・・・っと」
しまった、という顔で鷹介は口をつぐんだ。
だが、それを聞き逃す一甲ではない。
「妬いた?お前、俺と一鍬のことをそんな風に見ていたのか」
「だーもう、昔の話!昔の!」
そう言って鷹介は一甲の腕から逃げ出した。
「鷹介」
そっぽを向いた鷹介の背中を、一甲は再びそっと抱いた。
「あーもう・・・その、別にHしてるとかそんなこと思ってたわけじゃないんだぞ」
「当たり前だ」
「けど、お前らいっつも一緒だったし。オレなんて半人前でお前と肩並べられないし、って・・・これでもオレ、悩んでたんだ」
「だが、今はこうしている」
「ん・・・そうだな・・・」
一甲の腕の中で鷹介は器用に向きを変えた。
ことん、と茶色い頭が一甲の首筋に落ちる。
「なあ、一甲・・・」
「なんだ?」
「・・・」
聞き逃すほど小さな声。
ふっと一甲の頬が緩んだ。
「そういうことは、もっと大きな声で言ってもらいたいが?」
「いいじゃん、聞こえただろ」
「もちろんだ・・・俺も“愛している”」
鷹介が囁きにした言葉を、はっきりと音にして一甲は鷹介に口付けた。
「ん・・・ん?んんん?!」
大人しく一甲に身を任せかけた鷹介が急に身を捩った。
キスと同時に上着の裾から一甲の手が手を忍んできたからだ。
さすがは電光石火ゴウライジャー、などと感心している場合ではない。
慌てて唇をもぎ離す。
「このどスケベ!!こんなとこでサカんじゃねえっ!」
「嫌なのか?」
鷹介の慌てぶりとは反対に、一甲は余裕綽々。その手は止まることなくしなやかな背中を嬲る。
「いっ、嫌ってわけじゃねえけど・・・んっ・・・もう・・・」
弱いところを探られて、鷹介は抵抗を諦めた。
(なんか忘れてる気がするんだけどなー)
という鷹介の思考は、形になる前に熱情の渦に流されていった・・・。


やっぱりこんな結末(笑)次は忘れられたあの人の番!→