熱帯夜<4>

 

ぴちゃっという獣が水を飲むような音で我に返る。
一瞬意識が飛んでいたらしい。
イッてしまったあとの気だるさが体中に残っている。
やっぱりさすがにちょっと早かったんじゃないだろうか?
「一甲・・・」
隣にいるはずの男を呼んだら、
「なんだ」
妙にくぐもった声が足の間でした。
え?足の間?
慌てて半身を起こす。
急速に意識がクリアになるとともに、さっきの音と一甲の行為と自分の体の感覚がひとつながりになった。
「い、一甲、何を・・・あっ!」
返事の代わりに強烈な刺激が与えられた。
信じられない。一甲がオレのを・・・くわえてるなんて!
「あ、そんなの・・・ダメだ・・・って・・・」
そう言ってはみたものの、この状況ではなにをいまさら、かも。
「なにが駄目なんだ?」
案の定、オレのアレを舐めながら平然と一甲が答える。
そして今イッたばかりだというのにソイツはもう気持ち良くなりはじめてやがる。自分の体ながらはしたなさに目まいがする。このままじゃあっさり二回目・・・いや、それはダメだ!
「い・・・いっこ、う・・・ちょ、ちょっと待て・・・んんっ・・・待てったら!」
やっとの思いでそう言って、一甲の頭を引きはがす。
「どうした?」
一甲は不承不承という感じで身を起こしたが、それでもオレと視線が合う位置まで上がってきてくれた。
真っ正面で見つめあうのは正直恥ずかしい。それにこの位置だとちょうどオレの太股に一甲の高ぶりがあたるのだ。それはしっかり熱くなってて、さらにオレの顔に血を上らせる。
「嫌だったか?」
少しだけ心配そうな一甲の問い掛け。慌ててオレは首を横に振った。
「い、イヤじゃない!その、すごく・・・イイ。けど・・・」
うひゃあ、やっぱり恥ずかしい。でも、ちゃんと言わなきゃ。
「その・・・オマエの・・・うー、あの・・・今度はオマエの番・・・だから・・・あーダメだ!これ以上言えねえ!」
叫んでオレは顔を伏せた。意志薄弱、と言うなら言え。オレにはこれが限界だ。
「嬉しいことを言ってくれる」
オレの耳を舌先でなぞりながら一甲はそう言った。
「一甲・・・」
顔を上げると言葉とは裏腹に一甲は怒ったような顔をしていた。なんでだ?
「後悔、するぞ」
そういうことか。
「しない」
即答するとぎゅうっと抱きしめられた。
ぐんと一甲のモノが質量を増すのがわかった。つられてオレの前も堅くなる。
どちらからともなく唇を合わせた。
「その言葉忘れるな」

「んんんんっ」
巨大な異物感にオレは喘いだ。
うつ伏せにされ、腰を高く上げさせられた格好を恥ずかしいと思う余裕すら既にない。
潤滑剤代わりに迅雷流伝来の傷薬とやらを塗り込まれ、さんざん指でかき回されたソコは、案外素直に一甲を迎え入れたけど、やっぱりデカい。指なんかメじゃない。もしかしたら後悔ってこのことだったのかもと頭の片隅で思った。
でも後悔していない。これはオレ自身が望んだことだから。
ゆっくりとオレの中の一甲が動き出す。
その動きに合わせて強烈な圧迫感と内臓を引きずり出されるような感覚が交互に襲ってくるのを、シーツを握りしめて耐えた。
それでも何度か抜き差しされているとその感覚は消えていき、別の感覚がソコを支配し始める。
まるでオレという人間がソコから変わっていくような、そんな錯覚。
さらに一甲の手が前に回ってきて、中途半端なままのオレ自身はその中に握り込まれた。
「ん・・・」
不思議な感覚。
前からの快感と後ろからの刺激とがないまぜになって世界が揺らぐ。確かなものは背中にのし掛かってる重みだけ。一甲とベッドの間でオレはとろとろに溶けだしてしまいそうだ。
ぐいっと深く一甲が入ってきた。
「ああっ!」
びくん、と体が跳ねた。
さらに二、三度深く突き上げられてのけ反った。
「い、一甲!一甲・・・!」
「どうした?」
動きを止めず一甲が訊いた。
「そ、そこ・・・あああっ!・・・んんっダメ・・・ダメ、だから・・・あっあっ!」」
身も世もなくオレは声を上げた。一甲が動くたびに電流をながされているような灼熱感が走る。
「ここか?」
訊くな訊くな訊くなーーーーっ!ついでに動くなーーーっ!
オレは必死の思いで頭を振って訴えたが、一甲には通じない。
「あああああっ!」
目の前で火花がスパークした。
と同時にオレは前の方の熱が急速に高まるのを感じた。
ウソだろうっ!?
でもその変化は紛れもなく絶頂の前触れ。
「一甲・・・一甲・・・」
わけもなく恐ろしくなって一甲を呼ぶ。
「イキたいか?」
背中に覆いかぶさるようにして耳元に囁く男を必死で見上げて肯定の合図を送る。
「イク・・・一甲・・・オレ・・・変・・・も、イク・・・ああ・・・」
「いいぞ。俺もイク」
熱い吐息が項に落とされる。一甲の動きが一段と速くなった。
「ああああっ・・・一甲、一甲、いっこう・・・」
「鷹介っ」
短く一甲が吠え、ぎゅっとオレを抱きしめた。
体の奥で一甲が膨れ上がり上り詰めるのがわかった瞬間、オレは二度目の絶頂とともに意識を手放した。

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