熱帯夜<3>
オレの部屋は6畳のワンルーム。
家具らしい家具といえばベッドだけ。
入るなり目に入ったそれは今朝起きたままのしわくちゃの状態で、それが妙に生々しくて思わずオレは目をそらした。
今更だとは思うが、急に不安になる。このままオレはここで一甲とスルのか?もっと正確に言うなら、ここで一甲に抱かれるのか?それがオレの望みなのか?
背後でドアがばたんと閉まった。続いてカギの音。
不意にまわりからすべての音が消えてしまったような錯覚に陥る。そんなはずはない。日は暮れたとはいえまだ宵の口だ。外に出れば都会の喧騒が氾濫してるに決まってる。
けど、ここにはオレと一甲しかいない・・・
「鷹介」
名前を呼ばれて、心臓が口から飛び出しそうなくらい跳ね上がる。
首筋に落とされる熱い息。
ああ、とオレは息を吐いた。
そうだ、オレは望んでいる。
4か月前初めて出会った。その時から惹かれていた。敵になると言われて悲しくて、追いかけて振り払われ、仕方なく戦いながら、それでもどこかで信じていた。きっと分かりあえると。結果オーライだけど多分に惚れた欲目があったのだと今ならわかる。
それくらいオレは一甲が欲しかった。
その欲求が単なる憧れではないとオレはもう知っている。
オレは一甲と触れ合いたい。
知識でしか知らない行為を、今、ここでしたい!
オレは覚悟を決めてジャケットを振り落とした。
服は意地で自分から脱いだ。
お互い生まれたままの姿になってベッドになだれ込む。
初めて触れる他人の肌のリアルな感触にかあーっと頭のてっぺんまで恥ずかしさが突き抜けた。
畜生、これぐらいで固まってどうすんだよ。今、覚悟を決めたんじゃなかったのかよ。
そうは思っても体が言うことを聞かないんだからしょうがない。
どうしようもなく情けない気持ちで一甲を見上げたら、ぎゅうっと抱きしめられた。
「そんな顔をするな」
耳に直接囁かれる一甲の声。
「なんで?」
そんな顔ってどんなのだろうと思いながらオレは訊き返す。
「歯止めがきかなくなる」
「歯止めって・・・そんなの、いらねえだろ?ここまできて今さらビビんなよ」
本当はビビってんのはオレのほうだけど、そんなことは絶対に言わない。
だってオレは覚悟を決めたんだから。
「いいのか?」
・・・この状況で訊くかフツー。それは野暮ってもんだとオレでも思うぞ。
「いいに決まってんだろ!」
ちょっとだけ乱暴に言い捨てて、オレは自分からキスをした。この期に及んで悩むのは性に合わない。
「鷹介」
唇の動きだけで名前を呼ばれ、今度は一甲から口付けられる。
何度も何度も角度と深さを変えて繰り返されるキス。そしてそれは顎から首筋へ、さらには鎖骨から胸へと降りていく。
「うんっ」
思わず声が出た。
乳首を含まれたのだと気づいたのはそのあと。
こんなのまったく想定外だ。自分の体にそんな部分があるだなんて今まで知らなかった。
痛いようなむず痒いような、それでいて下半身をダイレクトに刺激する快感にクラクラする。
「んんっ・・・」
自分の声じゃないような甘ったるい声が勝手に漏れる。
畜生・・・悔しいけど、限界近いかも。
下半身はすでに臨戦状態。
たったこれだけの行為でこんなになってるなんてどう考えても早すぎる。
もちろん一甲のだって熱くなっている。
けど、オレのはそれどころじゃない。
ダメだ。このままじゃもたない。
けど・・・どうしようもなく気持ちいい。
やっぱり限界。
限界だけどどうしていいかわからない。
わからないから目の前の肩にしがみついた。
「鷹介?」
「イク・・・」
色気もくそもないけど、そう言うのが精いっぱいだった。
「・・・わかった」
低い囁きとともに一甲の手がオレ自身を握った。
ゆっくりと上下に扱かれる。
たったそれだけの行為なのに他人に与えられるというだけでこうも激しく感じるのだろうか。
言い様のない恥ずかしさと、とてつもない快感にぎゅっと目をつぶった。
直後に訪れる絶頂感。
「ああああっ!」
押さえきれなかった声とともにオレは一甲の手の中に欲望を吐き出した。