12月14日,天馬の誕生日。
この日夜勤をすませ,昼近くに家に帰った洸は少し休むと,準備を始めた。
天馬も仕事だが,早番にしてもらって翌日は休みが取れたと連絡があった。
天馬からは仕事が終わり次第,連絡が入ることになっており,ほぼ予定通りな時間にそれはあったのだった。

天馬を乗せ,高速を走り,まわりがすっかり暗くなるころ,洸の車は駐車場に滑り込んでいた。
「八景島シーパラダイス・・だよな。」
「ああ。」
「水族館なら辰平のころでもよかったのに。」
「まあ,たまのことだ,遠出もよかろう?」
柔らかい洸の声が,天馬の耳元で聞こえ,そのまま,そっと頭を抱きかかえられた。
「行こうか?」
軽い触れるだけのキスをして,2人は車から降りた。
遊園地の方へとゆっくり歩いていきながら,
「なあ,もう閉まるんじゃないのか?ここ。」
そう言う天馬に,いつもの調子で洸が答えた。
「ああ,そうだな,もうすぐ閉園時間だな。」
「って,なんでそんなに落ち着いてるんだよ!」
にっこりと天馬に向かって微笑んで,
「まあ,まかせておけ。」
そう答えると,目的地に向かって歩き始めた。
目的地は「シーパラダイスタワー」。
係員と話をしに行った洸が帰ってきて,天馬の手を引いた。
タワーに乗ろうとする洸に,
「おい,閉園時間なんだろ?いいのかよ!」
「貸し切りだ,俺とお前でな。」
「はあ?」
まるで色気のない天馬の声に苦笑いしながら,それでも手を引いて乗り込んだ。
乗ってしばらくは,憮然として文句を口にしていた天馬だったが,タワーが動き始め,だんだんに上昇するに連れて,その口は言葉を発しなくなった。

「どうした,天馬?気に入らなかったか?」
無言のままの天馬に
「15分だけだが,この夜景はお前の独り占めだ。」
洸がそう言うと
「おまえも,いっしょじゃん?」
やっと天馬が口を開いた。ガラスに顔がくっつきそうになりながら感嘆の声を上げる。
「綺麗だな,洸。」
「ああ,この景色も,お前が守ったものの一つだ。」
「おれたち・・だろう。」
ニカッと笑った天馬に,噛みつくようにキスをされた。
”よし,第一段階クリアだな!”


タワーから降りても,天馬のテンションは上がったままだった。
「洸,次の予定は?」
「あ,ああ,食事だ。」
洸の手を引っ張って車のところまで行き,乗り込むと,車は,近くのシーフードレストランへと入っていった。
食事をしている間もハイテンションの天馬を現実に引き戻したのは,携帯の音だった。
『天馬か?!』
「豪?どうしたんだよ,そんなに慌てて。」
『仁が・・』
「仁が?仁がどうしたんだ・・?」
『拉致された・・』
「なにぃ?!ほんとか?」
『俺の携帯に,仁の携帯からメールが入った。『返して欲しかったら○○ホテル△△△号室へ来い』って。今向かってるんだ。』
「豪,警察には?」
『知らせてない・・・多分警察では・・・』
「なんで?お前らしくないじゃねぇか。」
『それが・・・ダイルを預かったって・・・あったんだ。しかも,タリアスとレムルズを連れてこいと・・。』
「なんだとぉ!行こう,洸!早く!!!」
あのころを思い出させるような天馬の気迫に,
「わかった。」
そう答えると,指定されたホテルへと向かって車を走らせた。
”順調だ,第2段階クリア!”


指定されていたのは,新しくできたホテルのスウィートルームだった。
3人が揃って部屋の前に立ったのを見計らったように,豪の携帯にメールが入った。
『そのまま3人で入ってこい 抵抗は無駄だ』
身構えようにも,装着しようにも,力を持たない今,3人にできることは従うことだけだった。


洸が静かにドアを開けると,
「そのまま中に入ってこい,奥へな。」
その声に天馬が反応した。
「まさか・・・ロギアなのか?」
叫ぶようにそういうと天馬は前にいる伝通院を押しのけて,奥へと走った。

そして・・・
聞こえてきたのは,パーンという乾いた音・・。

NEXT