<2>side鷹介

ホテルの部屋に入るなり、シャワーを浴びてこいと言われて鷹介は戸惑った。
普段と違う一甲の様子に、すでにゲームが始まっている事を知らされる。
なんとなく淫靡な造りのバスルームで鷹介は、ため息をついた。
心臓の鼓動が早い。
柄にもなく緊張している。
原因は一つ。
一甲が持っていた紙袋。あの中には例の「アダルトグッズ専門店エデン」で購入した品々が詰まっているのだ。
あれから二人で店まで行き、いくつかの商品を買った。実際には選んだのも買ったのも一甲で、鷹介は並べられた商品を呆然と眺めていただけなので、今、一体このバスルームの外で何が自分を待っているのかはよくわからない。
しかし、それはあそこに陳列してあったもののどれかには違いないのだった。
場所をこのラブホテルの一室に移し、これから始まるのはそれらを使ったエロティックなゲーム。
(なんかオレ・・・とんでもなく間違ってる気がする・・・)
もう一度小さくため息をついてから、鷹介はシャワーを止めた。

「あ、上がったぜ・・・」
いくぶん緊張した面持ちで戻ってきた鷹介を見て一甲は唇の端で笑った。
ゆっくりと鷹介に近づき、腰のバスタオルをはぎ取る。
一糸纏わぬ姿になった鷹介と対照的に彼はまだ着衣のままだ。
そのまま軽々と鷹介を抱き上げベッドへ運ぶ。
「お前は脱がないのかよ?」
挑むように鷹介が一甲を見上げる。
だが、一甲の表情は変わらない。
「俺はあとだ。では、まず、定番からだな」
するりと一甲が取り出したのはアイマスク。
鷹介がリアクションを起こすより早くその視界が遮られる。
「うわ・・・な、なあ・・・一甲、やっぱやめようぜ・・・」
不安げに鷹介が見えない目を向ける。
印象的な目が隠された顔は、ぽってりとした唇が強調されいつもにも増して色っぽい。
「言い出したのはお前だ」
その一言で唇の誘惑を断ちきり、一甲は次のアイテムを取りだした。
がしゃがしゃと耳障りな金属音を立てるそれの正体に気づいて鷹介は青ざめる。
「一甲!ちょ、ちょっと待てって・・・」
「待たん」
アイマスクを外そうとした鷹介の手を難なく捕らえて、一甲は後ろ手に手錠をかけた。
「一甲〜〜〜」
「情けない声を出すな・・・それとも」
言葉を切って、一甲はぐいと顔を寄せた。
「降参か?」
「うっ」
鷹介が返答に詰まる。その単語だけは言いたくない鷹介の性格を把握している一甲に分があったようだ。
「・・・う〜〜、これくらい・・・平気だ」
「いい返事だ」
耳元にキスを一つ落として一甲は鷹介の手を放した。
「では、座ってみろ・・・そう、足は前に出すんだ」
「こ、こうか?」
言われるままにベッドの上に足を投げ出して座る。
体中に注がれる一甲の視線がチクチクと皮膚を刺激する。
「・・・次は何だよ。は、恥ずかしいんだから、早くしろよな!」
大声を出すのは恥ずかしさの裏返し。
「行儀の悪い口だな」
だが、一甲はそう言って鷹介の口を塞いでしまう。
「なにをっ・・・んっ・・・」
抗議の声はキスに吸い取られて、代わりに流し込まれた蜜の息苦しさに鷹介は喘いだ。
不安定な姿勢では身を捩ることすら出来ない。
飲みきれずにあふれた滴を一甲の舌が舐め取り、さらにその舌が首筋を這う。
「視覚を奪うと他の感覚が鋭くなるだろう?」
うなじから耳の後ろを舌でなぞりながら一甲がレクチャーする。
「あ、ああ・・・」
吐息のような鷹介の返事は早くも艶を含んで掠れている。一甲の言う通り見えない不安が皮膚の感覚を鋭敏にしているようだ。それに両手の自由が利かないから、熱の逃がしようもない。
「ああっ!」
一甲の指が胸の突起を擦る。
のけ反った上体を一甲が抱き留めた。
その体勢のまま、一甲は執拗に首筋と乳首への愛撫を繰り返す。
しかもどちらもが少しずつ的を外していて、鷹介はもどかしさを募らせる。
「い、っこう・・・ん・・・ソコ、じゃな・・・」
「こうか?」
一甲の手が、鷹介の要求とは反対に動く。
「あ・・・わかって、るクセ、に・・・」
「焦らされるのも悪くないだろう?」
「そんな・・・あうっ!」
いきなりイイところを嬲られて鷹介の身体が跳ねた。
一転して一甲の指がポイントだけを刺激する。
「あ、あ・・・ああっ・・・」
行き場のない奔流が鷹介の中を駆け回った。
投げ出された足は無秩序にシーツを蹴り、触れられてもいない性器が形を変える。
「効果絶大だな」
笑いを含んだ声が耳朶をくすぐる。
その余裕が悔しくてにらみつけても、それは視界を覆う壁に阻まれて一甲には届かない。
それどころか勃ち上がったモノを握られて、声もなく喘ぐ。
強すぎる快感にどうする事もできず、鼻先にあった肩口に歯を立てた。
厚みのある筋肉が布地越しに鷹介の歯を押し返す。
「こら」
やんわりと顎を掴まれ上向かされた。
「猿轡が必要だったか?」
新たな道具の名称に、鷹介は弱々しく頭を振った。
「イヤ・・・だ・・・」
ふっと一甲が笑う気配がした。
「素直だな。だが」
不意に一甲の腕が緩み、、鷹介はベッドに下ろされた。
もっとも何をされようと、すでに芯まで溶かされた鷹介の身体はされるがままだが。
「お仕置きは必要だ」

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