お世辞にも片づいているとは言い難い寝室も今は気にならなかった。
すべてを脱ぎ捨てた姿でベッドに雪崩れ込む。思いつきで買ったセミダブルのベッドが役に立つとは思ってもみなかった。
深く舌を絡ませながら、互いの体を探る。
筋肉に鎧われた肉体に手を這わす。柔らかくはないがしなやかで力強い感触が心地よいと思った。
伝通院の動きを追うように天馬の手も伝通院の体を確かめて行く。ただ触れているだけのそれが火のように熱かった。
胸からわき腹を通り、引き締まった腰へ。
そして紛れもなく自分と同じ形の性器にたどり着いた。
「ん・・・」
右手で包むように握ると天馬が小さく呻いた。同時に手の中のものの質量がぐっと増す。
仕事以外で同性のそれに触れることがあるとは思ってもみなかった伝通院だが、不思議と抵抗も違和感もなかった。
いやむしろ愛おしいとさえ感じる。
そう、愛おしい。
ゆっくりとした指の動きに合わせて天馬の口から漏れる声に伝通院自身も昂ぶっていった。
それに気づいたらしい天馬の手が伝通院のモノを握り返してくる。
「くっ・・・」
的確なその動きに思わず伝通院も声を漏らした。
見合わせた視線の先で天馬が笑う。
「ビンビンだな」
「お前もだろう」
「ああ。結構、ヤバい」
「俺もだ・・・」
繰り返されるキスと愛撫。
頭の芯までしびれるような快感。
次第にキスも忘れて指先に集中する。
個人差はあるのだろうが、お互いどこをどうすればいいのかわかるから余計に意地になる。
お互い相手を先にイカせようという意図が見え見えだ。ムードもなにもあったものではない。
「て、天馬・・・くっ・・・」
「洸・・・ッ」
互いの名を呼びあい、二人同時に絶頂を迎える。
強烈な射精感に一瞬目の前が白くなった。
「キョーレツだな・・・」
ぱったりと腕を投げ出して大きく息をついた天馬がそう言った。
伝通院も全く同感だった。
これほどの快楽は経験がない。
そして身の内から沸き上がってくるこの欲望。
今達したばかりのアノ部分がまた劣情を訴えてるのにはもう苦笑するしかない。
気化した汗が体表の熱を奪っているのに、体の奥から新たな熱が生まれてくる。
熱に突き動かされるように伝通院は天馬に口づける。
じっくりと味わうように探る。
軽く、深く、繰り返す。
冷えかけた汗がまたじっとりと互いの肌を濡らすまで。
「・・・お前、キス巧い・・・」
ようやく開放された唇で天馬が呟いた。
「嬉しいことを言ってくれる」
天馬の頬に伝通院はキスを落とした。
「ふん、やらしいって言ってんだ・・・んっ」
可愛くない返事を返す天馬に苦笑しつつ、その首筋に伝通院は舌を這わせた。
そこから盛り上がった肩の筋肉へ、肩関節から鎖骨を中心へとなぞる。
伝通院の舌と唇の動きに天馬の口からくぐもった声が漏れた。
時々、跡が残らない程度に吸い上げながら、張りのある肉体をさらに味わう。
鍛えられた大胸筋の上に飾りのように突き出した乳頭もためらいなく口に含んだ。
「あ・・・くっ!ぅんん・・・」
舌で転がすように刺激すると天馬が切なげに頭を振る。
再び勃ちあがってきた天馬のシンボルが伝通院の腹をくすぐった。
体をずらしてソレを見る。
「あ、洸・・・?」
慌てたように天馬が頭を起こした。
が、その手が止めるより早く伝通院はソレをくわえ込んだ。
「うあっ!」
天馬の上体が再びベッドに沈む。
温かい粘膜に包まれる湿ったその快感は伝通院も知っている。
表面の感覚だけではなく、視覚と聴覚に与える快楽もだ。
「あ・・・あ・・・あ、きらっ!ヤバ、いって・・・」
天馬の手が伝通院の頭を引きはがそうとする。
「なにがヤバいんだ?」
おとなしく引きはがされてやりながら、意地悪く伝通院は訊いた。
「バッ、バカヤロッ!」
真っ赤になって天馬が喚く。
両足を広げられたままの格好で言われてもかわいいだけなのだが、それは本人に言うとおそらく殴り飛ばされるに違いない。
もちろん天馬が躊躇うのもわからなくはないのだが。
「俺は構わないぞ」
そう言って伝通院は再びその部分に顔を埋める。
のけ反った天馬の指がシーツにめり込んだ。
「ああっ・・・クソ、この、エロオヤジ・・・っ」
「・・・ずいぶんだな」
クスクスと笑いながらも伝通院は舌の動きを止めない。
「んん・・・もう・・・ど、なっても・・・知らね、ぞ・・・ん・・・畜生・・・」
抵抗をあきらめたらしい天馬だが、悪態をつくのだけはあきらめないらしい。
だが、それも次第に切れ切れの喘ぎに変わる。
「あっ、ああ・・・んんんっ、も、う・・・あ・・・」
ぎゅっと天馬の太股に緊張が走る。
限界寸前、というその時。
くちゅ、と音を立てて伝通院はその部分から口を離した。
「うっ、ああ・・・」
突然放り出されて天馬が呻いた。中途半端に放り出された体が荒い息をつく。
その様子を伝通院は目を細めて眺めながら天馬の右足をグイっと持ち上げた。
「え?」
天馬が戸惑った目を向ける。
が、あらわになったその場所への視線で瞬時に事態を把握したらしい。
今度は天馬の抵抗の方が早かった。
素早く起き上がって枕元までずり上がった天馬に伝通院は苦笑した。
「やはり駄目か?」
「や、そのっ、ダメっちゅうわけじゃ・・・けど、その・・・」
「けど?」
そう訊きつつも伝通院は仕方がないと思っていた。自然の摂理には反する行為だ。頭で分かっていても本能的に拒否することもあるだろう。本音はともかく、無理強いする気は無い。
しかし天馬の論点はそこではなかった。
「アソコ舐めるのはその・・・なんだ・・・やっぱ、あとでキスするわけだし・・・」
FREEZE。
きっちり3秒間固まってから、伝通院は「なるほど」と呟いた。実に恐竜なみの神経伝達速度だ。
「洸?」
スススとにじり寄ってきた天馬が伝通院の顔を下から覗き込んだ。
上目遣いに見上げてくる天馬としばし見つめあい、伝通院は敗北を悟った。
天馬には敵わない。
ムードとは無縁でも惚れたものは仕方がないではないか。
「天馬」
触れ合う位置にあった肩を引き寄せる。そのままもう一度ベッドに押し倒した。
「洸?」
「口でしなければいいんだな」
「え?あ?うー・・・そう、だな」
うんうん、と天馬は頷いた。
ならばと伝通院は身を起こしサイドテーブルに置いてあったチューブを手に取る。
GOサインがでているなら据膳食わぬは武士の恥。
「なんだ、それ」
「潤滑ゼリーだ。それと・・・」
伝通院は正方形の薄い包みも取り上げた。円盤状に盛り上がった中央部分を見るまでもなく、それが何かは天馬にも分かる。
「なんだ、準備万端じゃん・・・」
このムッツリスケベ、と舌を出した天馬をキスで黙らせる。
「もう少し色気のあることを言えないか?」
無駄と知りつつ、ついそんな言葉が口をつく。
「うるせえ・・・緊張してんだよっ」
ぷいと天馬は身体ごと横を向いた。
“緊張”
天馬からそんな言葉を聞くとは思っていなかった。見れば心なしか頬が赤い。
初めて見るそんな天馬の顔に、不覚にも休憩に入ってしまっていた不肖の息子が俄然元気を取り戻す。
やはり天馬には敵わない。
だが、ベッドの上でのことは別だ。
「天馬」
伝通院は赤く染まった頬にそっと口付け、“緊張している”背中を抱きしめた。
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