ある日のおぼろ研究所。
ハムスター館長以下、男連中がみな出払って女二人だけのお茶会が催されていた。
「で、ホンマのとこ、どないなってんのん?一鍬ちゃんと」
3つ目のケーキに手を伸ばしながらおぼろが訊いた。
「やだ〜、なんにもないですよ〜」
生クリームのついたフォークを振って七海が答える。
「なんや、つきおうとるんとは違うんか」
「ん〜〜〜、なんかね〜、そういうのとは違うかな〜ってカンジなんですよ〜」
「そうかいな〜、ハタから見てたら、ええ感じやねんけどなあ」
「ん〜、確かにね、二人でいるのっていいな〜と思うんですよ〜。一鍬、優しいし。あ、私の営業の時、時々サクラで見に来てくれたりするんですよ。最近は誘えば一緒に出かけてくれるし」
「なんや、えらいのろけられてるような気イもするんやけど・・・」
「でもね」
七海が声のトーンを落とした。
「それ以上、ってなるとなかなか・・・鷹介みたいに突っ走れればいいのかもしれないけど、私はやっぱり女だからいろいろ先のことも考えちゃうし」
「先のこと、て、結婚とかか?」
えへへ、と七海は笑った。
「だって、今は一緒に戦わなきゃいけないから一鍬はそばにいてくれるけど、この戦いが終わったらどうなんだろう、って、そう思っちゃうんですよ。一鍬には迅雷流を再興するって夢があるから・・・たぶん、一甲と行っちゃうんじゃないかな。そのために今まで努力してきたんだし」
はあ〜っとため息をつきながら、七海は4個目のケーキを皿に移した。
「で、私は、というと成り行きでハリケンジャーにはなったけどまだ忍風館を卒業もしてないし、演ドルだって相変わらず鳴かず飛ばずだし。まだ自分が何をしたいかわかんないんですよね〜。でも、そういうもの全部捨てて一鍬についていくのはなんか違う気がするし」
「せやなあ。せやけどアンタそれで後悔せえへんか?気持ちいうもんは伝わってるようでも、言葉にせえへんかったら形にならへんのやで。確かに形にしてしもたら、ひょっとして壊れることもあるかもしれへん。けど形にせんかったら、いつまでも宙ぶらりんで後引くねんで」
「おぼろさん・・・」
おぼろの言葉の微妙なニュアンス。それは・・・
「ん?あ、まあ、一般論や一般論」
そう言って疾風流随一、ひいては地球忍者随一の女科学者・三十代独身は、三個目のケーキの最後の一口を口に放り込んだ。
明後日の方向を向いて咀嚼を続ける彼女を、七海はしばらく見つめていたが結局何も言わず、自分の皿を片づけにかかった。
人に歴史あり、そんな言葉を七海が知っていたかどうかはわからない。
そしてもう一人。うっかりこの会話を盗み聞いてしまった者がいた・・・。
The End