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四方をクリーム色の壁に囲まれた清潔な病室には暖かな春の日差しが満ちていた。
窓際のベッドの上には、
「あ〜ん」
と、口を大きく開けた鷹のヒナが一羽。
左腕のギプスやあちこちに巻かれた包帯がが痛々しいが、胃腸はいたって健康なようだ。
そしてその口に甲斐甲斐しくせっせと食事を運ぶ親鳥が一羽。
こちらも包帯だらけだが、幸いにも重傷と呼べるほどのものはないらしい。
「あーあ。見てらんないわよねえ」
七海がため息をついた。
「兄者・・・」
一鍬が頭を抱える。
「なーんだよ、七海。右手じゃ食いにくいんだからしょうがないだろ」
食べさせてもらった里芋を咀嚼しながら鷹介が言った。
声のトーンがいつもよりややおとなしいのは肋骨を痛めたせいで大声を出せないからだ。
「こら、食べ物を口に入れたまま喋るな」
次の芋を切り分けながら一甲が注意する。
平和な光景。
ほんの数日前、揃って殺されかけたとはとても思えない。
「まあ、二人とも生きててよかった、ってことで・・・」
苦笑する吼太はすでに病室の甘ったるい光景から目を背け、窓の外を眺めている。
「ほんまに・・・高梨先生から連絡もろたときはどないなるかと思たのになあ。お父ちゃんなんかびっくりしてまたハムスターになってまうし」
なあ、お父ちゃん、とおぼろが手に提げたハムスターキャリーに話しかける。
「オ、オホン。ちょっとしたミスじゃ・・・して、先生、二人の容体はどうですかな?」
少しばかりバツの悪い無限斎(ハムスター体)は話題をすり替えた。
「二人とも驚異的な回復力ですよ。私どももさすがに血だらけの一甲くんが鷹介くんを抱えて現れた時には驚きましたが・・・いや、致命傷がなくて本当によかった。早ければ来週にも退院できると思いますよ」
サソリの時に続いて二度までも二人の命を救った医師は穏やかなほほ笑みを見せた。
「先生!ホントですか!やったあ!・・・あ痛ててて」
片手でガッツポーズを取った鷹介がわき腹の痛みにうめく。
「うー・・・でも、よかったよな、一甲。もう、病院の飯飽きちゃったしさ・・・」
「そう思って、差し入れに来たぞ」
静かな、それでいて凛とした声が一同の上を渡った。
「御前様!」
戸口の前で涼やかな美貌が艶然と微笑む。
その後ろから岡持を担いで現れたのは緑の人。
「ヘイ、エブリバディ〜。特製蕎麦10人前でい!」
微妙にファイヤーモードが混じった口調に一同から笑いが漏れる。

嵐が過ぎ去ったあとの暖かな春が居合わせた者たちを包んでいた。



あやめ様、遅くなりました!
もらってやってください(返品不可・笑)

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