「どうするんだ?」
「へへ〜、こうすんの」
言うなり鷹介は左の人さし指を白いクリームに突っ込んだ。
「はい」
「?」
クリームだらけの指が俺の目の前に突き出される。
「舐めて」
嬉しそうにそう言う鷹介の意図がまだ一甲にはわからない。
しかし、舐めるのはやぶさかではない。
「へへへ」
くすぐったそうに鷹介が身を捩る。音を立てて吸い付いてやると、うん、と小さく官能のため息を漏らした。
「なるほど、な」
一甲が呟く。
「名案だろ?な、オレにも喰わせて」
期待に満ちた目で見上げる口元に、ならばと、一甲は自分の指にクリームをすくい取り運ぶ。
待ちかまえたように絡みついてくる舌。
その瞬間、その淫靡さに眩暈がした。
もう一度すくい取ったクリームも差し出せばすぐに生き物のような舌が奪いにくる。
つまみ上げた苺は濡れ光る唇がくわえて飲み込んだ。
「どう?エロいだろ?」
口の端で笑いながら鷹介はなおも俺の指に舌を這わせる。
これは本当に俺の知っている鷹介か、と疑いたくなるほど妖艶なその表情から目が離せない。
「なあ、お前も脱げよ」
鷹介の手が一甲ののシャツにかかる。
その手に促されるように一甲はシャツを脱ぎ捨て、下も脱いだ。
その隙におとなしく座っていた場所から降りた鷹介が現れた一甲自身を見てニヤリと笑う。
もちろん興奮しているのは隠しようもない事実だ。
「こっちも舐めていい?」
言うなり、鷹介は許可も待たずにその部分に白いものを塗りたくった。
「おい!」
「いいじゃん、キレイにするからさ」
「くっ」
くわえ込まれた部分から一甲の身体に電流が走る。
肉感的な唇と赤い舌ががデコレーションされたモノの上を行き来するその光景は、直接的な刺激もさることながら、その視覚的な刺激があまりにも凶悪だ。
体中の血液が鷹介と繋がっている部分に集中していくのを一甲は感じた。
まずい、と思ったが時既に遅し。
理性のタガが外れる音がした。
「鷹介」
「ん?」
「もういい」
引き起こし、抱きしめる。
ぬらぬらと光る唇を塞ぎ、甘ったるい口腔を思うさま舐め上げた。
「ん、ん・・・んーっ!」
じたばたと暴れる鷹介を床に組み敷いて、下肢に手を伸ばす。
ずっと中途半端な状態で息づいていたモノは、一甲の手で瞬く間に息を吹き返す。
「ん、ああっ!い、いっこ、う・・・ちょ、と・・・待って・・・」
「待たない」
「んな・・・いきなり・・・あう」
首筋に歯を立てた。
いつもなら焦らすようにしか触れないポイントをダイレクトに攻める。
首、胸、脇、そして太股の付け根。どこがどんな風に感じるかは調査済みだ。
「あ・・・んん」
鷹介の中心を口に含む。
抱えた脚が跳ね上がるのを押さえ込み、性急に追い立てる。
平らなリノリウムの床を鷹介の爪が掻きむしった。
「ダ、ダメっ!」
切羽詰まった鷹介の哀願。
だが、一甲はさらにギリギリまで追い上げてから口を離した。
「はあ・・・はあ・・・おま、え、いきなり、過ぎ・・・」
解放された鷹介は恨めしそうに浅い呼吸を繰り返す。
そのの手を取って一甲は己のモノに導く。
触れればそれが待ってやれる状態ではないと分かるはずだ。
「お前が仕掛けた結果だ」
宣告して、鷹介をうつ伏せにする。
「で、でも・・・」
鷹介が怯えた顔を見せる。
まだなんの準備もされていないソコにいきなり挿れられると思ったようだ。
「大丈夫だ」
一甲は手を伸ばしてコンロのそばのボトルを手に取った。
抱え上げた尻の上に中の液体を垂らす。
「あ・・・んっ、な、なに?」
垂らされたものの感触に鷹介の背中がわなないた。
「オリーブオイルだ」
短く答えてすばやく手を滑らせる。
オイルの助けを借りた指はいつも以上にスムーズに鷹介のなかに潜り込んだ。
「えっ、うわ、うそ・・・あっ!」
さらに指を二本に増やし、鷹介の感じる場所を攻める。
空いたほうの手は前に回して鷹介自身を扱く。前にまで流れてきたオイルがギリギリのところで放置されていたモノにも絡みつき、一甲の手の動きを助けた。
急速に鷹介の身体が高まっていく。
悲鳴に近い喘ぎが上がるが、その響きはどこか甘い。
「い、いっこ・・・う・・・あ、いい・・・」
「挿れるぞ」
「ダメ、まだ・・・あああっ!」
暴走する欲望のままに一甲は鷹介を貫いた。
濡らされてはいても十分には開いていないその場所が一甲自身を締めつける。
気を抜くと瞬時に暴発してしまいそうな危機感を、じっとやり過ごした。
鷹介が大きく息を吐いたのを合図に、ゆっくりと動き出す。
だが、それも長くは続かない。
沸き上がる衝動に身体のコントロールがきかなくなる。わかってはいても止められない。
激しく揺さぶられて、鷹介の背中がしなる。
それに合わせて、一甲の手の中の鷹介も熱を増していく。
動きに合わせてチリチリと鈴が鳴った。
「あっ、あっ・・・いっこ、う・・・イ、イクっ!」
短い悲鳴。
手の中に吐きだされる熱を感じながら、一甲は絶頂を駆け登った。

「はあ〜」
バスタブ頭を凭せ掛けて鷹介が息を吐いた。
セックスのあとの気だるいひととき。
オイルやクリームでベタベタになった身体を流し、ゆっくりと湯に浸かる。
男二人で入るにはいささか狭い浴槽だが、入れないこともない。
「おまえさあ・・・」
横目で鷹介が一甲を見た。
「ホンット、趣味がオヤジだよな」
「うるさい」
クスクスと笑う頭をこつんと小突く。
普段はこんな子供っぽい表情をしているくせに、時々とんでもない色気を見せるから油断がならない。
先程のエロティックな仕草を思いだし、ふと一甲に疑念がわいた。
「・・・どこで覚えてきた」
そう、疑念。嫉妬とも言う。
「え?」
首をかしげる鷹介の唇を指でなぞった。
「・・・ああ、さっきの・・・昔、映画で見たんだ。蜂蜜とか氷とか小道具使うセックスの映画。あ、AVでも見た事あるよ」
「映画・・・」
「あ、もしかしてまた妬いてる?」
ちらりと上目遣いに見上げてくる視線。
「ああ、妬けるな」
この視線が捕らえるもの全てに嫉妬するといっても過言ではないかも知れない。現在・過去・未来、この瞳に映る全てのものに。
「バーカ」
そう言って湯をはね飛ばし鷹介はケラケラと笑う。
「ああ、馬鹿だ」
憮然と、しかしはっきりと一甲は答える。それくらいの自覚はあるのだ。
ふと、鷹介は真顔になった。
「・・・あのさ」
「なんだ?」
「オレだって妬けるんだぜ?」
「!」
思わぬ鷹介の告白に一甲が絶句する。
「やっぱ、気づいてなかったんだ。ま、いいや、そんなことだと思った。でも、オレだってお前の過去が気にならねえわけじゃない。一人や二人じゃないだろ?お前が、その、抱いた奴って・・・けど、気にしても仕方ねえじゃん。過去はどうしようもない。けど、今は、これからはオレんだから、それでいいって思うことにしてる。だからお前もそう思ってくれねえ?だいたいさ・・・」
ちゃぷんと鷹介の手が湯を割って現れた。
その手を取って一甲は鷹介を引き寄せた。
「お前以外のヤツのなんて舐めたかねーよ」
ちろりと唇のすき間から覗いた舌が一甲の唇を舐めた。
誘われるように一甲は口づける。
だが、引き寄せようとした身体はするりと逃げ出した。
湯の飛沫ををもろに浴びた一甲の耳元で囁く声。
“続きはベッドで、な?”
先に立ってそそくさとバスルームを抜けていく鷹介が今夜一番の御馳走なのは間違いなかった。

終わり


咲耶さーん、いかがでしたか〜?設定使わせていただいてありがとうございます!

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