2003.12.7 

 

『ハッピーエンドシアター』

2003.12.7

一甲が映画があまり好きじゃないのは知っていた。
いや映画が好きじゃないというか、映画館が好きじゃないんだろう。
「何もわざわざ暗がりでみなくともよいだろう?」
以前映画に行こうと誘った時、困った顔でそう言った。
俺がごねればしぶしぶ承知はしてくれたが、なんとなく終始落ち着かない様子だった
のと、気がつくと映画の画面ではなく、俺を見ていたりして思わず赤面してしまったのだ。
「百面相だな、お前を見ているほうが面白い」
そういって笑って、映画に感動して知らずダーダー泣いていた俺にハンカチを差し出
してくれたっけ。

暗がりが駄目なのだろうと思う。
なんとなく分かる。当然夜目は効くし、一甲ほどの忍が暗がり怖いと思うはずもな
い。
それだから、ある意味密室の空間で目の前の画面に集中できないのだ。どうしても気
が張る。
俺も1人なら確かに、あまりのめり込めないのだが、一甲と一緒だとどうも安心して
しまうらしく、空きだらけで画面に見入ってしまう。それも一甲が気を張る要因になっているのだろう。
だから考えた。
だって俺、一甲と一緒に楽しみたい。

「提案、明日の休み映画みようぜ」
「映画?」
「あ、いま嫌な顔したな!」
「いや、そんなことはない」
慌てて否定しても、眉間に皺入ってるぞ、一甲。
「安心していいぜ、映画館じゃなくて、家で観よう」
「ビデオか?」
「レンタルいってお互いに好きなの借りて、一日ゆっくり観よう、な?」
俺の唐突な提案にちょっと驚いていたが、一甲は
「まあ、たまにはいいだろう」
と返事をしてくれた。

「そんなに観れるのか?」
近所のレンタル店て何本も選ぶ俺に一甲は呆れた顔でそういった。
「今日観れないときは明日でも観れるし、いいじゃん」
それぞれ好きな作品を選び、そこで俺は一甲の選んだモノをみて、意外とちゃんと映画を知っていることに気付いた。
それなりに最近の話題作を選んでいる。
「意外と普通の好みだよな、一甲」
「世間勉強だ」
「なるほどね・・」
流石に笑いが漏れた。そういう観方なんだ。
ま、小学生にでも分かるようななぞなぞを知らないくらいだった頃を思えば進歩して
るよ、一甲。
口には出さないで、そう思いながら俺は好みのアクションものと、
観たかったけど恥かしくて映画館にいけなかった恋愛モノを選んだ。

「一甲の部屋にしようぜ」
「ああ、片付いてるからな」
「嫌な言い方だなー。どうせ俺の部屋は散らかってるよ」

丁寧にポップコーンとコーラを買って。
「カーテン閉めようぜ」
「そこまでするのか?」
「そのほうが気分でるじゃん!」
俺の言葉に苦笑いしながら、一甲はビデオにテープをセットした。

一本目は軽いコメデイタッチの作品。
2本目に俺が借りてきた恋愛ものを観た。
それは所謂悲恋もので、集中してみていた俺は又不覚にも涙をダーダーを流していた。
すると頬になにやら柔らかい感触。
「い、一甲!」
一甲はいつのまにか、俺を後ろから抱き、濡れた頬を指でぬぐってくれていた。
目尻にそっと唇が触れる。
「流石に映画館ではこんなことはできないな」
「当たり前だ!」
「嫌か?」
「・・・・嫌なわけないだろ・・・」

俺って・・・安易。
哀しい映画をみているのに、背中に感じる体温と鼓動に幸福を感じてしまう。
もしかして、どんな映画こうしてみれば「ハッピーエンド」を観たような気分になれる?
俺の呟きに、
「それでいいのか?」
と一甲。
さすがにそれは疑問に思うところだよな、一甲でも。
けどさ、
「うん、上等」
そう返事を返す、俺って単純?
「ならよいが・・・」
呆れた返事しながらも、俺にまわされた腕に力がはいるから、なんかすげー嬉しい。

「また、こうしてみようぜ」
「そうだな」

ここで、
お前の腕の中で、
ハッピーエンドシアターで。


このラブラブっぷりがたまらんです♪鷹介ったら特等席ですよ奥さん!
森さま、ありがとうございました!!