Forever and ever
夕闇に沈み込むような街の片隅で、小さな諍いが起きていた。
だが、通り過ぎる風のような気配に振り返る人はない。
普通の人の感覚域を超えた争いは、裏通りの一角でその姿を現した。
その場でにらみ合うのは三人の若者。
壁際に追いつめられた形の一人の腕からはあきらかな出血があった。
「なんだ、たいしたことないな疾風も」
「二対一とは卑怯な!」
「実戦に卑怯もクソもあるか。だいたい、先に仕掛けたのはそっちだろう」
三者の間で高まる気。
そのとき。
一陣の風が、その一触即発の凝縮された気を吹き飛ばした。
さらに何事かと身構える男達に彼らがこれまで感じた事のないほどの冷たい殺気が吹きつける。
声もなく三人は顔を見合わせた。さっきまでの敵対心はどこへやら、血の気の引いた顔には生気すらない。
彼らとて疾風、迅雷それぞれの修業を積んだ忍者である。
今の一瞬で自分たちの命がなかっただろうということは理解していた。
「はい、そこまで」」
そう言って空から舞い降りた影は疾風流空忍・椎名鷹介。
だが、それの姿を認める前に、三人は床に昏倒した。
「ビンゴ、だったな。一甲」
「ああ」
答えたのは地面に倒れた三人の中央に立つ影、迅雷流角忍・霞一甲。
「さっすが、御前様。こいつら御前試合の時からモメてたから何かしでかすとは思ったけど、まさか演習で仕掛けるとは思わなかったなあ」
「里を離れるので監視が甘くなると踏んだのだろう」
「残念でした、だな」
べーっと舌を出す鷹介。今や教官の肩書きも持つ彼のあまりにも子供っぽい仕草に一甲は苦笑した。
その彼が合図を送ると、いつの間にか路地の入り口に横付けされていた濃紺のバンから黒子ロボが走り出てきた。
黒子ロボたちはよどみなく気絶させられたままの生徒たちを運び出して行った。
「ったくもう、時代は変わったってのに」
二人とその仲間たちがジャカンジャから地球を守ってから幾年月、紆余曲折を経て宇宙統一流の名の元に二つの流派は一つになった・・・とは言ってもそれぞれのシステムは旧来のままなのでどこがどう変わったわけでもない。それでも幹部や研究者レベルでの交流もあり、両派が再び刃を交えることはない。
「そうだな、だがまだ変われない連中がいる」
「じーさん連中はしかたないとしても、若い奴らまであれじゃあ困るぜ・・・ま、そのためにオレたちが監視にかりだされてるんだって、知らなかったんだろうけど・・・って、おい!ナニすんだよ!」
いつの間にかそばに来ていた一甲に、いきなり抱き寄せられて鷹介が抗議の声を上げた。
しかも一甲の手は鷹介の腰の辺りで不埒に動いている。
「このスケベオヤジ」
「誰がオヤジだ?」
楽しげに一甲はそう言ったが目は笑っていない。
「あ、やっぱ、気にしてんだ。自分だけ三十路なの・・・んっ!」
小憎たらしい言葉を紡ぐ唇を一甲の唇が塞いだ。
逃げようとする頭と腰をしっかりと抱きかかえて強引に舌を侵入させ抵抗を封じる。幾度となく繰り返された永遠のワンパターン。鷹介もそれを分かっていて誘っている節があるので一甲も遠慮はしない。路地の奥戸はいえ、うっかり目撃した通行人が目を逸らしてしまうような熱烈なキスに酔いしれた。
「・・・ドスケベ・・・」
ようやく解放された鷹介がほんのりと赤く染まった目元で一甲を睨みつけた。
「早く帰って報告しないといけねえだろ」
鷹介にしては珍しく真っ当な意見だが、その鼻先で一甲は笑った。
「短報はさっき送った。あとは明日でも構わんだろう」
「明日?」
「せっかく出てきたのだ。久しぶりにお前とゆっくりしたい」
そっと一甲の唇が鷹介の耳元に触れ、低音を響かせる。
鷹介の背筋がぞくりと震えた。
「久しぶりって・・・一昨日、シただろ」
「里では落ち着かん」
里。
そう、彼らは現在、迅雷の里に住んでいる。
統一によって障壁が無くなったことを理由に両派の幹部達が伝説の後継者達の帰還を望んだためである。
無論、そう彼らの思惑通りにことが運ぶわけがなかったわけだが・・・結局、一甲と鷹介が迅雷に、一鍬と七海、それに吼太が疾風に居を移すこととなったのだった。
「そりゃそうだけど・・・あ、まさかお前最初っからそのつもりで出てきたのかよ?!」
「さあな」
ふっと唇だけで一甲は笑った。
その笑顔に鷹介は勝てない。
「行くぞ」
相変わらずカップルで賑わっていた観覧車に乗り、遅めの夕食をとってから宿を取った。
することは決まってるんだからラブホテルにしようと言いだしたのは鷹介だった。
しかし。
「なんか・・・恥ずかしいな・・・」
居心地悪そうに鷹介は俯いた。
明るい場所で身体を晒すのは久々だった。里では気兼ねもあっていつも灯を消していたのだ。もっともお互いにそれが不自由な眼はしていないが。
「綺麗だぞ」
「だーかーらー!それ言うなって前も言ったろ!」
顔を真っ赤にして喚く鷹介を一甲は抱きしめた。
そのままベッドに倒れ込み、キスを繰り返す。
ついばむようなキスから舌をからめ捕るような深いキスへ。
絡めた足で刺激された互いの欲望が二人の狭間で成長する。
「鷹介・・・」
囁いて離れた唇を追うように鷹介の瞼が開く。欲情に濡れた瞳が一甲を映した。
「どうしよ、オレ、すげえ興奮してる」
「ああ、俺もだ」
答えて一甲は体を移動させ、鷹介の欲望をくわえ込んだ。
「ああっ・・・」
跳ね上がった声を鷹介は慌てて手のひらで押さえる。
それに気づいた一甲が顔を上げた。
「声を出しても構わんぞ」
「え〜、でも・・・」
「鷹介」
不意に一甲の顔が顔を曇らせた。
鷹介の顔の位置まで頭を戻し、視線を合わせる。
「・・・なんだよ、んな顔して」
「・・・鷹介、辛いか?」
「え?」
「・・・やはり、連れていくのではなかった」
迅雷の里で与えられた住まいは他の者の家とは少し離れている。それでも情事の時、鷹介は声を押し殺した。二人の関係はとうに知れ渡っているのだが、歩くたびに無遠慮な視線を投げ掛けられるのは愉快なことではなかった。
「ばか、んなんじゃねえよ。その、声出さないのは・・・お前に聞かれるのが恥ずかしいからに決まってんじゃん・・・」
予想外の答えに驚いて一甲はまじまじと鷹介を見た。
その視線に耳まで赤くなりながら、それでも鷹介は目を逸らさなかった。
「忘れたのかよ?言い出したのはオレだぜ。一甲が欲しけりゃ、オレを一緒に連れてけ、って。もうハナっからバレてんだから隠したってしょうがないじゃん。その程度のことが嫌だったんなら、お前と別れることだってできたんだ・・・ま、それができねえからこうしてるんだけど」
鷹介の指が一甲の上腕の筋肉をなぞる。
「それにオレとしちゃあ、お前といられる時間が増えてうれしいんだぜ?」
「それは・・・俺も同じだ」
「だろ?まったく、お前ってば心配性だよなー」
そう言って、鷹介はくすくすと笑った。その瞳が悪戯な輝きを宿す。
「な、もしかして最近、淡泊だったのはそのせいか?」
「た・・・ああ、まあ・・・多少はな」
憮然と一甲は答えた。
「なーんだ、よかった」
「よかった?」
「いや〜、実は30過ぎて枯れてきたのかと・・・あ」
鷹介はしまった、という顔をした。
しかし時既に遅し。
「ほう」
すっと一甲の目が細められる。
「わ!お、怒るなって。だって、だって、やっぱ、心配じゃん!」
「それは悪かったな。心配をかけた詫びに、存分に楽しませてやろう」
「うそっ」
「俺は嘘はつかん」
「え?あ、ちょ、ちょっと待て・・・っああ!」
いきなり握られて鷹介がのけ反った。
「し、仕返しかよ」
「宣戦布告だ」
ニヤリと笑って、一甲は鷹介の眦に口付けた。
さらに頬、耳、うなじから鎖骨へと唇を滑らせ、胸の突起を口に含む。
口を塞げないように両手を捕らえて脇で固定し、舌で強く転がすように弄ぶと鷹介の腰が跳ねる
「んっ、あっ、いっ・・・こう・・・手・・・はな・・・せよっ・・・はっ、ああ!」
痺れるような快楽が叫びとなり、動かせない手がシーツを掻きむしる。
構わず一甲はもう一方の突起にも同じ刺激を与えた。
鷹介の声がさらに艶を帯びる。
ようやく一甲が両の手を解放した時には、鷹介はすっかり抵抗も羞恥もかなぐり捨てていた。
胸の突起は二つとも真っ赤に色づいてじんじんとうずいている。
だが、それはほんの序の口で、息つく暇も与えず一甲は鷹介自身に舌を這わせた。。
「うあ・・・んっ、んん・・・」
すでに堅く勃ち上がっていったソレは、絡みつく舌に煽られてすぐに歓喜の涙を零した。
飲み込むように吸われたかと思うと、じれったいほど先端だけを舐められる。
限界はあっという間にやって来た。
「あっ、ダメっ、んんん・・・もう、イク・・・」
太股の内側に緊張が走る。
「あ・・・ああああ!」
そのまま鷹介は一甲の口の中に吐き出していた。
それを一甲が飲み込む音が、快感に霞む鷹介の耳にやけにクリアに響いた。
「鷹介」
放心したような鷹介の耳元に一甲は囁きを吹き込んだ。
はっと目を上げた鷹介が慌てて目を逸らす。
その様子を満足げに見やって一甲は鷹介の髪を梳いた。
「前言撤回、だな」
「う、うるせえ・・・このエロオヤジ・・・」
「ほう、まだ足りないらしいな」
「うっ・・・」
一瞬、言葉に詰まった鷹介を一甲はいとも簡単にひっくり返した。
「うあっ!」
ふわりと腰が浮いて、鷹介の尻が一甲の眼前にさらされる。
ためらいなく一甲はそこに舌を這わせた。
「っあ・・・い、いっこ・・・」
思わず身を捩って逃れようとする腰をしっかりと抱え込み、入り口を丹念に舐めほぐす。
「う・・・ん・・・あっ・・・はぁ・・・」
前にされるのとは違う快楽。
開いていくその場所から鷹介の体温が上がり、滑らかな肌がしっとりと一甲の手に吸い付いた。
のけ反った背の均整のとれた筋肉が一甲を煽る。
「ん、あ・・・あ・・・あ・・・ん・・・いっこ、う・・・!」
せっぱ詰まった声で呼ばれて一甲は顔を上げた。
顔をねじ曲げて一甲を見ている濡れた瞳。
ゆっくりと一甲はそれに近づき、唇を重ねた。
「どうした?」
「もう・・・わかってんだろ・・・」
恥ずかしげに鷹介が目を伏せる。
長いまつ毛の描くその媚態に暴走しそうになる欲望を抑えて、一甲は指を滑らせた。
「ああ・・・」
舌よりもずっと長い侵入者に鷹介は吐息を漏らす。
ゆっくりと一甲がそれを動かすとたまらずに腰が揺れた。
「これでいいのか?」
「んっ、い、いわけ、ない・・・だろ・・・」
強がる唇に口付けて、指を増やす。
三本の指にポイントをかすめられて、鷹介はあられもない嬌声を上げる。
「くっ・・・そっ・・・なん、で・・・お、まえ・・・そんな・・・余裕・・・」
切れ切れの悪態に一甲は苦笑する。
「余裕など、あるものか」
そう言って自らの腰をぐっと押し付ける。
今にも暴発しそうなほどのソレを感じて、鷹介がうっすらと笑った。
「挿れていいか?」
「訊くな」
鷹介の答えに今度は一甲が微笑んだ。
鷹介のアソコから指を引き抜き、仰向かせる。
膝裏に手を差し込んで持ち上げ、開かせた場所に自身の楔をあてがった。
「んっ・・・くっ、うっ・・・」
どうしても鷹介はいまだにこの瞬間だけは目を閉じてしまう。
そんな鷹介を気遣って一甲はことさらゆっくり腰を進める。
ともすれば鷹介を引き裂いてしまいたくなる己の衝動をなだめすかすのにはもう慣れていた。
「あ、んんっ・・・は、あっ・・・あうっ・・・」
全てを収めた一甲が動き出す。
ゆっくりとした律動が鷹介の悦楽を引き出す。
「ソコ・・・ん・・・ああ・・・いい・・・」
休憩中だった鷹介のモノが息を吹き返したのを見て、一甲はぐっと体重をかけた。
「あああ!」
ぎゅっと鷹介が一甲を締めつける。
眩暈がするほどの衝撃と快感をやり過ごして、一甲は二つ折りになった鷹介の身体をかき抱いた。
「鷹介・・・」
首筋に顔を埋めて囁けば、腹に当たる鷹介自身が快感を訴えて跳ねた。
「いっ、こう・・・来、い・・・よ・・・」
甘い吐息に一甲は己の欲望を解き放った。
肉感的な唇から漏れる喘ぎが意味をなさなくなり、抱き寄せた一甲の背に爪が食い込む。
「あーっ!あああっ!んー!ああ・・・っ!イ、イ・・・クっ!」
「よう・・・すけっ!」
二人同時に絶頂を駆け登った。
ゆっくりと湯に浸かりながら、過ぎた快楽に強ばった身体をほぐす。
「ジャグジーって面白いな」
太股の上に座らせた鷹介が湧いては消える泡を手ですくって笑う。
一甲の鼻先をくすぐる髪からはシャンプーの匂いがした。
引き寄せて腕の中に捕らえると、力を抜いてもたれ掛かってきた。
「鷹介」
「ん?」
「・・・愛している」
鷹介の耳元に寄せた唇からこぼれたのはやはりその言葉だった。
鷹介を呪縛するその言葉。
だが、この言葉こそが一甲の真実だった。
「ばーか、わかってるよ」
囁くように答えた唇が、そっと一甲のそれに重ねられ、吐息が湯気に紛れていった。
終
如月須磨子さまに捧げます!
何年経ってもこの二人はこのままですわ、きっと(爆)別館SSトップへ 本館トップへ