「なにやってんねん、二人とも。子供やないねんから鬼ごっこはたいがいにしとき」
おぼろ研究所にたどり着くなりソファに倒れ込んだ鷹介と、倒れないまでも完全に息が上がってしまっている一甲にもっともなツッコミが入った。
別に鬼ごっこをしていたわけではないが、鷹介が必死で逃げるからつい一甲もむきになって追いかけてしまった結果である。
「ほんまに、いつまでも転がってんと、はよ報告書、書いてしまいや」
「げえ〜っ」
容赦ない追い討ちに、とりあえずお決まりの不満の声を吐いて鷹介が起き上がる。
伝説の忍者たちは、目下、アレによってもたらされた被害の調査と復興の支援を職務としているのだ。
一甲も黙って所定のデスクについた。
ちなみに報告書は一応、デジタルデータ保存となっているが、入力をまともにできるのは一甲と吼太だけである。他の三人は紙に書き込んで、あとで一甲と吼太に入力してもらっていた。
しばらく室内には一甲がキーボードを叩く音と鷹介のペンが立てる音、そして時々書き損じるのか鷹介が紙を丸める音の三つだけが流れていた。
コンッ
乾いた音を立てて丸めた紙くずが一甲の見ていたディスプレイにぶつかって落ちた。
「おい、鷹介、ゴミは・・・」
クズカゴにきちんと、と言いかけて一甲は気がついた。
丸めた紙になにか大きく書いてある。
広げてそれを読んだ瞬間、絶句した。
そこにはマジックで大きく元気よく、
と書かれていたのだった。
書いて寄越した鷹介は素知らぬ振りで報告書と格闘している。
その姿と色気の無いラブレターを交互に見て、早急な引っ越しを考える一甲だった。