<ETERNAL FLAME>

日暮れ近くになって戻ったおぼろの研究所は天井が崩れ落ちて半分埋まっていた。

「お帰り」

おぼろの笑顔が5人を迎える。

その後ろにハムスターでなくなった日向無限齋。

長かった5人の戦いはついに終わりを告げたのだった。

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夜半過ぎ。

7人で身を寄せ合うように眠っていた場所から、一甲は一人、起き出して外へ出た。

先ほど炊事に使ったたき火の跡に少しだけ薪を置いてまた火をつけた。

闇に踊る小さな炎を見つめながら考える。

これまでのこと、これからのこと、そして・・・

鷹介は何も言わなかった。

何事もなかったかのように笑っていた。

この火をおこしたときも「キャンプみたいだ」とはしゃいで皆の失笑をかっていた。

それでも何も感じなかったはずはないのだ。

一生一緒に生きると誓ったのに、また自分は命を投げ出すほうを選んでしまった。

鷹介が傷つくとわかっていながら。

不意に背後に気配を感じた。

それが誰なのか振り向かずともわかったが、あえて彼は振り向いた。

「鷹介」

銀色の非常用毛布を肩から垂らした鷹介がいた。その表情がひどく頼りなげでどきりとする。

「どうした?」

「お前が・・・戻ってこないから・・・」

小さな声で答えて鷹介は一甲の方へ歩いてきた。

すとん、と隣に腰を下ろす。

「火、きれいだな」

そう言ったきり鷹介は黙ってしまう。

一甲のほうも言いたいことはたくさんあったがうまく言葉にできず、やはり黙ってしまう。

そのまま二人は並んで赤く揺れる炎を見ていた。

もどかしい沈黙。

そっと一甲は鷹介を盗み見た。

炎に照らされて陰影が強調された横顔からはなんの感情も読み取れなかった。

鷹介の視線がこちらを向いていないことが一甲をためらわせる。

手を伸ばせば届く距離なのに、いつものように抱き寄せることができない。

それが誓いを破ってしまったことへの負い目なのは十分わかっていた。

「・・・終わったんだな」

ぽつり、と鷹介が言った。

「・・・ああ」

一甲は答えた。

「オレたち、勝ったんだよな」

「ああ」

「まだ、夢を見ているような気がする・・・」

鷹介は膝に顔を埋めた。

「正直さ・・・今度こそダメかと思った・・・今度こそお前が・・・」

途切れた言葉の先は聞かなくてもわかっている。

誰もが、一甲自身でさえ死んだと思った。

生きて再び鷹介と会えるなど思いもしなかった。

生きていると気づいたとき、真っ先に後悔の念がわいた。

なぜこんな残酷な道を選択してしまったのだろう、と。

「・・・鷹介」

名を呼べば茶色い髪が揺れる。

「すまなか・・・」

「謝んな!」

一甲の懺悔の言葉は悲鳴に近い鷹介の声に遮られた。

顔を伏せたまま鷹介は続けた。

「わかってる。あの場合ああするしかなかったんだって。わかってるけど・・・そうじゃなきゃ勝てなかっただろうってわかってるけど・・・オレだって同じ立場なら同じことしたと思うけど・・・それでも許せないから・・・だから謝るな」

ああ、と一甲は思った。

やはり許されないのか。

しかしそれも当然といえば当然だろう。

愛していると言いながら二度も目の前で死のうとした。

鷹介がひどく傷つくのを知っていて二度目の行動に出た。

許せというのはあまりに虫がよすぎるだろう。

「そうか・・・」

それしか言えない自分を一甲は内心笑った。

覚悟していたつもりだったが、相当ショックだったらしい。

「だからさ」

火に顔を向けたまま鷹介が言葉継いだ。

一甲はじっと次の言葉を待った。

「謝らなくていい。オレ、決めたから」

ゆっくりと鷹介は顔を上げた。

「決めたんだ・・・もう二度と死なせてやらないって。一生つきまとって見張ってやるって。お前が嫌がって逃げ出しても地球の果て、いや、宇宙の果てまで追っかけていってつきまとってやるって」

「鷹介・・・?」

ニヤっと鷹介が笑った。

「バカ一甲!」

叫びとともに鷹介は一甲の胸元に倒れ込んできた。

その体を受け止めて抱きしめて。

ようやく一甲は許されていることに気づく。

「鷹介・・・」

喜びと愛しさとせつなさと・・・到底言葉でなど表しきれない思いが一甲の胸にあふれてくる。

抱きしめる腕に力を込めれば、背中に回された鷹介の腕がぎゅっとしがみついてきた。

「バカヤロ・・・一甲のバカヤロウ・・・」

「ああ、馬鹿だ。俺は大馬鹿だ」

「お前なんか・・・お前なんか・・・大好きだからなっ!」

「ああ、愛している。俺の全身全霊をかけてお前を愛している」

力強く囁かれた瞬間、鷹介が耳の先まで真っ赤になる。

「な、なんで、そーゆーコトさらっと言えるんだよっ」

「本当のことだからだ」

一甲は鷹介の顔を上げさせ、大きな瞳をのぞき込んだ。

鷹介は恥ずかしそうに目を反らした。

「だからヤなんだよ。そんなふうに言うくせに、お前はすぐにオレを置いていこうとするんだ。お前みたいにヤなやつ知らねえよ」

「悪かった」

「あ、謝んなって言ってるだろっ!カン違いすんなよ。これは罰なんだからな。オレのこと嫌いになったって有効なんだからな」

「わかっている」

そっと重ねた唇に抵抗はなく・・・

 

そして全てが終わり、全てが始まる。

the END


結局、砂吐きです。ウチの兄者は相変わらず直球しか投げません。

たぶん投げられないんだと思います。で、鷹介はいっつもデッドボール・・・。

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